コロナ禍を通して進化した
教員と学生それぞれの「学び」
神奈川大学
神奈川大学は1928年開学の横浜学院を前身とする、11学部23学科、大学院8研究科に約2万人の学生が集う総合大学です。
創立以来受け継がれてきた「質実剛健・積極進取・中正堅実」という建学の精神を大切にしながら、それを現代に合わせて「地に足をつけた実直さ・堅実さを土台にして、明日を積極的に拓(ひら)く」ことと捉え直し、人材育成に取り組んでいます。
神奈川大学の法学部では、2016年からロゴスウェアのコンテンツ作成ソフト「LOGOSWARE STORM Xe」「LOGOSWARE THiNQ Xe」を導入し、反転授業に活用しています。導入から約10年という節目に、コロナ禍や生成AIの台頭による大学教育の変遷について、中村教授にお話を伺いました。
利用例非公開
神奈川大学 法学部 法律学科、法学研究科 教授 中村 壽宏さまに伺いました。
10年間で定着した反転学習による講義
中村教授には2016年から約10年間STORM Xe、THiNQ Xeをご活用いただきありがとうございます。以前の取材(*)で、「民事訴訟法」などの講義で反転学習を導入されていると伺いました。その方式は今も継続されていますか?
はい、継続しています。反転学習は私の講義の手法として学生にも定着しました。
神奈川大学の講義は1コマを100分としていますが、私の講義では、各講義日の2週間前からeラーニングシステムでその回の予習コンテンツを公開しています。本来は講義の冒頭で10〜15分かけて説明する内容を5分程度の動画にまとめ、事前に視聴してもらうのです。これにより捻出できた10分を、具体的な事例や補足説明に充てることができ、講義時間を有効活用できています。
例えば、担当している民事訴訟法の授業では、裁判で権利の実現を求めることをある料理を完成させることになぞらえ、その完成に必要な「要件事実」を料理の必須の材料に例えて説明する工夫をしています。「裁判で原告が権利を認めてもらうためにはA・B・Cという材料(事実の主張)を集めなければならず、一つでも欠けると料理が完成しない(=敗訴する)のと同じだ」と伝えるのです。こうした具体例を話す時間を十分に確保できるため、学生の理解度が飛躍的に向上します。
また、講義後にはTHiNQ Xeで作成したテストを解いてもらい、予習コンテンツの視聴と合わせて、それぞれ学習すると平常点が加算される仕組みにしています。この事前・事後の学習が単位取得を後押しし、eラーニングの学習率は2016年頃の7割から、現在では9割まで上がっています。
* 2016年 受講生の7割強が反転学習を活用、学習効果を実感_神奈川大学様
https://suite.logosware.com/storm-maker/voice/kanagawa_u/
コロナ禍がもたらした講義スタイルの変化
2019年からのコロナ禍では、講義はどのような方法で実施されたのですか?
2020年4月は完全休校となり、5月に再開した後2年間はZoomを使ったオンライン講義に切り替えました。コロナ禍以前から反転学習の素地があったのは大きかったですね。私自身が率先してZoomのマニュアルやオンライン講義のガイドラインを作成し、学部内、そして全学の教員に共有しました。大学として導入していたeラーニングシステム「WebClass」も活用し、比較的スムーズにオンラインへ移行できました。
講義形式以外に変化したことはありますか?
まず、講義で使うレジュメの作成方法を変えました。そもそもよくある「数ページで構成されるパワーポイント」というのをやめ、A4用紙全面を使ってその回の授業内容を構造的にインフォグラフィックス の手法でビジュアル化し、学生が常に全体の中のどの部分を学んでいるか把握できるようにしました。これは学生からも好評で、コロナ禍が生んだ「発明」だと思っています。
リモート授業による学生の変化
Zoomによるオンライン講義は、学生にどのような変化をもたらしましたか?
オンライン講義は、学生に良い変化をもたらしました。
まず、講義中の質問が圧倒的に増えました。Zoomのチャット機能が、大勢の前では発言しにくいという学生の心理的なハードルを下げたようです。
興味深いことに、この「質問する文化」は対面講義に戻ってからも続いています。どうやら先輩から後輩へ「あの教授は質問にきちんと向き合ってくれる」という評判が伝わっているようで、講義の休憩時間や終了後、またメールなどで積極的に質問をくれる学生が後を絶ちません。
もう一つ、学習習慣そのものも大きく変わりました。コロナ禍を経てeラーニングシステム「WebClass」が講義に不可欠なツールとして定着し、予習コンテンツの視聴で得られる平常点が成績に加算されるため、学生は熱心に学習するようになりました。結果として、単位を落とす学生も目に見えて減っています。
生成AIとの向き合い方
中村教授は現在、教育支援センターの副所長として大学のFD(ファカルティ・ディベロップメント)を推進されていると伺いました。近年、学生による生成AIの利用については、どのように対策されていますか?
多くの教員が生成AIによるレポート作成を脅威と捉え、禁止を求める声もありました。しかし本学では、専門家による研修会などを通じ、「生成AIに答えられる問題を出題する側にこそ問題意識が必要だ」という方向で、生成AIとの共存を模索しています。
そこで、私自身も課題の作り方を大きく変えました。以前は「〇〇について自分の考えを述べなさい」といった形式が多かったのですが、これでは生成AIが容易に解答できてしまいます。また、法改正が頻繁にあるため、生成AIは古い情報をもとに誤った解答をすることがあります。
そのため現在は、私が作成した「複数の間違いを含む文章」の中から間違いをすべて見つけ出し、その理由を述べてもらう形式にしました。最新の情報を学習しきれていない生成AIには、すべての間違いを洗い出すのは難しいようです。いわば、生成AIとの「知恵比べ」ですね。
変化する環境、進化する大学教育
10年間で教育を取り巻く環境は大きく変わりましたね。
そうですね。今の学生はTikTokなどでショート動画を見慣れている世代です。そのため、教材も変化に対応させる必要があります。予習コンテンツの尺を5分以内にしたり、ユニバーサルデザインフォントを使用して全ての学生が見やすい資料を作成したりと、常に配慮しています。最近では、裁判制度上の重要ポイントを1分にまとめたサマリー動画を試験前に提供し、学生の復習に役立ててもらいました。
大学教員の中には、学生に分かりやすい教材を用意することに熱心なタイプと、あえて難解な内容を提示し、学生に深く思考させることを重視するタイプがいます。私が担当している法学の講義では、裁判所の具体的な実務を理解させることが重要であるため、前者のアプローチが適していると考えています。
そんななか、変わらずSTORM Xe、THiNQ Xeをご利用いただいているのはなぜでしょうか?。
なにより、私のやり方に合っているからです。例えば、Zoomの録画機能を使ってコンテンツを作成する方法などもありますが、今の学生は非常にクオリティの高い動画を見慣れています。目が肥えた学生を飽きさせないコンテンツを個人で作成するのは大変です。その点、STORM XeやTHiNQ Xeは、教育効果の高いコンテンツを効率的に作成できるのが魅力ですね。
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【担当者より:10年の歩みに寄せて】
今回お話を伺い、中村教授の「どうすれば学生がもっと深く理解できるか」という一貫した情熱に、改めて感銘を受けました。反転学習からオンライン講義、そして生成AIとの共存まで、時代の変化を前向きに捉え、テクノロジーを柔軟に活用して教育を進化させる姿は、まさに私たちが製品を通じて支えたいと願う理想の形です。
中村教授の先進的な取り組みは、多くの教育者の方々にとって、未来の教育を考える上での大きなヒントになると確信しています。私たちロゴスウェアはこれからも、教授のような情熱ある教育者の皆様の「最高のパートナー」であり続けられるよう、現場の声に耳を傾け、進化を続けてまいります。
*本記事は2025年8月に取材した内容をもとに構成しています。
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